3月 歌舞伎の音「附け打ち」

歌舞伎の「附け打ち」ってわかりますか?
歌舞伎の舞台脇で木片を板に「カン、カン、カーン」と打ち付けているアレです。
「附け打ち」は役者が見得を切るときや殺陣などの効果音として、歌舞伎舞台になくてはならないものなのです。

 

その「歌舞伎附け打ち」が今回の和gaku庵のテーマです。
講師は歌舞伎公演を中心に附け打ちの専門職として活躍している山﨑徹(やまさきとおる)氏。通常は歌舞伎を上演する館(ホール)の大道具方が「附け打ち」を担当しますが、山﨑氏は附け打ち専門を志願して活躍しているエキスパートです。

講座は、まるで映画の上映会のように、用意されたプロジェクタースクリーンで「附け打ちとは」の説明から始まりました。
そして「今、歌舞伎が熱い!」と語り出した山﨑氏。附け打ちで歌舞伎をもっとクリエイティブに、濃淡のあるドラマを作り上げたいと…。

もともと戸板を叩いて歌舞伎役者の演技などを強調することからはじまったという附け打ち。かつては舞台の進行やお客様の様子を見守る、舞台番の役割もになった時代もあったそうです。舞台左手に居るからこそ、役者のハプニングやお客様の動向がわかるわけです。

附け打ちの衣装は袴を脚絆でしぼったいでたち。たっつけ袴と言われます。背には座つきの座紋をつけるのですが、上演場所や座元によって変わるのでシールタイプになっているとのこと(笑)。

道具は附木と呼ばれる2本の角棒とそれを打ち付ける板。板はケヤキの正目を使いますが、ご自身で製作したものだそうです。材を何枚も調達しておき、何年も乾燥させてやっと使えるようになるとのこと。舞台の大きさや響きによって板や附木を使い分けしているそうです。

歌舞伎で附けの場は、役者の出や走り、見得、殺陣など場面を強調する場面が多いですが、黒御簾での演奏のタイミング取りの役割を果たしたりもします。時代物や世話物と呼ばれる人情話などの演目によって附け打ちの仕方も工夫され、まさに“音と間合い”の勝負が繰り広げられているのです。
山﨑氏は「附けは、舞台と客席の間を繋ぐ音」と話します。

実際の附け打ちの音の響は想像以上の迫力です。歌舞伎座の舞台で聞いているとそれほどとは思いませんでしたが、天井が低いところで打つと、天井板が落ちてくるほどだとか。
山﨑氏が披露してくれた附け打ちの響きに、受講者も思わず圧倒されました。前傾姿勢で両手に持った附木を左手先行でお尻の方から落とすように打つと、ふたつの音が出ます。「カンカン、カンカン」と左右同じ音。附木を落とすときにスナップをきかせるのがコツとのことです。

そして、受講者の附け打ち体験!
山﨑氏に手ほどきを受けて受講者代表が実際に附けを打ちました。仕上げには、スクリーンに映し出された今は亡き中村勘三郎さんの舞台に附けを入れるという、贅沢な体験でした。

今後歌舞伎を観るときに、附け打ちのパフォーマンスにも注目したくなる講座でした。

文責:皆方久美子



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