1月 歌舞伎を彩るおもちゃ箱「歌舞伎小道具」

2017年最初の和gaku庵、テーマは「歌舞伎小道具」です。
歌舞伎公演で小道具を一手に手掛けている藤浪小道具の近藤真理子さんを講師に迎え、歌舞伎の小道具にまつわるお話を、舞台で使われている実物の小道具を前にお話しいただきました。

いつもの会場に入ると、前にズラリと傘。
「これは白浪五人男、こっちは助六、これは娘道成寺かな……?」
と、興奮気味に話し合う歌舞伎好きの受講者たち。
傘の前には煙管をおいた煙草盆と文箱、お屠蘇セットがなぜか2セット。
これは何の演目に使うものかしら……?と、期待でワクワクする内、講座が始まりました。

1月の講座なのでお正月らしいテーマで、ということで、今回の主なテーマは「廓文章~吉田屋」。
ちょうどその前月、京都「吉例顔見世興行」で、片岡仁左衛門丈の伊左衛門、中村雀右衛門丈の夕霧で演じられたばかり。講師の近藤さんは、その担当で、1カ月京都に滞在なさったとか。
そして、その舞台で使われた小道具を、会場にお持ちくださったのです!

 

 

 

 

 

2種類の煙草盆と文箱、お屠蘇セットの謎はここで解きあかされました。
一つは、坂田藤十郎丈/中村鴈治郎丈の山城屋/成駒屋が使うもの、もう一つが片岡仁左衛門丈の松嶋屋が使うものなのだそうです。山城屋/成駒屋は鮮やかな朱塗りなのに対して、松嶋屋は黒。煙草盆はどちらも黒ですが、山城屋/成駒屋は大ぶりな銀の煙管が2本、松嶋屋は赤い小振りな煙管が1本。

他にも同じ演目でも、役者によって、小道具が微妙に違うものがよくあるとか。
「吉田屋」でも、伊左衛門が花道から登場するシーンで、和ろうそくを灯して役者に差しかける「つらあかり」を使う人と使わない人と、門松の作り方、座敷の床の間の絵や繭玉の飾り方が違ったり……。伊左衛門が花道から登場する時にかぶっている鳥追笠も、違うのだそうです。
そうした家による違いもしっかり把握して、揃えなければいけないので、小道具さんは大変です。

「吉田屋」で印象的に登場する炬燵も持って来てくださいました。
この炬燵、劇中で役者さんが持ったり、登ったりするので、軽くて丈夫なものでないといけません。そして、小道具さんを悩ませているのが、炬燵布団。段鹿子の表地に紅絹の裏地がついた布団が使われていますが、この段鹿子も紅絹も、今では作れる職人さんがいないのだそう。そのため、お白粉などの汚れを毎日丁寧にふいて、ペタンコになってしまわないよう、綿も入れ換えながら、大事に大事に使っているそうです。

職人さん不足、材料不足、という話は、伝統文化、伝統芸能の世界ではよく聞くことですが、歌舞伎ももちろん例外ではありません。
この日持ってきてくださった傘もその一つで、「傘の職人さんは絶滅危惧種」と。骨が壊れなければ、紙を張り替えて再利用することもできますが、骨が折れてしまったら、同じものをつくり直すことはほとんど不可能なのだそうです。「この1本が本当に貴重」と近藤さんも憂い顔。

歌舞伎の場合は、小道具のみならず、衣裳の問題もありますから深刻です。
どうか、これからも末永く、日本の伝統美術・芸能の結晶である歌舞伎が続いていきますように、と祈るような気持ちで、貴重なお話をうかがいました。

講座終了後には小道具を実際に持って記念撮影大会。
ついこの間まで、仁左衛門丈がかぶっていた鳥追笠をかぶらせていただき、悶絶してみたり、助六の傘をさしてポーズを決めてみたり、炬燵に入らせていただいたり……。

思い思いに歌舞伎の名シーンの再現写真を撮りあいながら、貴重な体験に感謝しきりの講座となりました。

文責:中村千春

 



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