5月 命が宿る瞬間「文楽人形」

はじめまして。
昨年、文楽の観劇デビューを果たしたばかりの中山薫と申します。
これまでに国立劇場のバックステージツアーで文楽人形を間近で見たことがあるほか、
和gaku庵の講座で、桐竹勘次郎さんから人形の構造などについてお話を伺ったことがありますが
実際に遣ってみることのできる体験講座は初めてです。

 

勘十郎さんのお弟子さん、勘次郎さんをお迎えしての本講座は、IMG_3487
①文楽人形の構造・扱い方などの解説
②参加者による人形遣いの体験
という流れで行われました。

 

①文楽人形の構造・扱い方などの解説

おもに次のようなお話を聞きました。

<構造>
・髪には人毛とヤク(動物)の毛とが使われている。
・手などを動かすための仕掛けにはクジラのヒゲが使われている。
・顔の部分は「かしら」(首と書く)と呼ぶ。
・約60種のかしらがあり、役柄によって手や足があるものと、ないものがある。
・衣装の中にはボディはなく、ここに腕を入れて中の仕掛けを動かす。

<扱い方>
文楽の人形は「三人遣い」といって、三人で動かしている。
・面遣い(おもづかい):顔と右手を担当
・足遣い:立つ、座る、歩くなど、体と足の動きを担当
・左遣い:左手を担当

三人の動きを合わせるために、面遣いが腰の動きで足遣いにタイミングを知らせるなど、客席に見えないところでサインを送っている。

※一人で動かす「つめ人形」と呼ばれるものもある。その他大勢のような端役に充てる人形で、手足はなく、おもに若手の人形遣いさんが担当している。

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IMG_3435体験に遣うものとして、娘、つめのかしらに加えて、小道具の一つであるキツネも登場。
「顔や尾の位置が高いと犬に見えてしまいます。
キツネはいつも物陰に隠れているイメージがあるので背中を丸めて頭と尾を下げると、キツネらしく見えます」
師匠の勘十郎さんはこのキツネが大好きだそうで動かし方にも厳しいのだとか。
実際にキツネらしくない動きとキツネらしい動きの違いを見せていただき、なるほど納得!でした。

 

②参加者による人形遣いの体験IMG_3424

当日は海外からの留学生を含む十数人の学生さんも受講していて、先に学生さんたちが娘の三人遣いを体験する様子を拝見。その後、私たち社会人受講者がつめ人形の立ち回り、歌舞伎でもおなじみの附け打ち、キツネの一人遣い、娘の三人遣いと、全員が何らかの体験をさせていただくことに。

勘次郎さんら本職の皆さんによるお手本を見てから、実際に手を入れ、仕掛けの作りを理解したうえで、指導を受けながら動かします。
実際に体験してみると、次のようなことがわかりました。

・糸(クジラのヒゲ)の引きかげんひとつで目や口、指先などの微妙な表情(動き)が決まる。
・三人で動かすため、顔の動きと足を含む体の動き、左右の手の動きをひとつの動作として自然に見せること
じたいが難しい。(美しい所作に見せるのは二の次)
・足遣いは、座る、立つという動きも担う。歩くときは、自分の左右の足と自分の両手(人形の足に見せる部分)
が連動するように動かす。右足と同時に右手、左足と同時に左手を出すので、ぎこちなくならないように
するのが難しい。またこのとき、他の二人が同じスピードで動いていかないと自然な動きに見えない。
・三人遣いの人形よりも軽くて扱いやすいというつめ人形でも、腕を高く上げたまま行う立ち回りは想像以上に
腕が疲れて、高さを維持することじたいが難しい。
・バタ、バタ、と動きに合わせて鳴らす附け打ちは人形の動きとタイミングを合わせるのが難しい。
・キツネの小道具は、キツネが舞台の上手、下手と往復する際に腕をうまく交差させないと胴の中の腕が
丸見えになってしまう。

などなど。

IMG_3459IMG_3453

 

IMG_3451なお、講座の立ち回りに使われたつめのかしらの一つは、斬られると面が割れて真っ赤になり(出血し)、目玉を白黒させることができるという特殊なもので観客をドキッとさせながら同時に笑わせるという上方芸能らしさが感じられるものです。

終了後の撮影会では、留学生の皆さんにキツネが大人気でした。

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私が体験したのは、娘の左遣いです。
自分の手の動きと人形の手の動きがどう連動しているかをどうしても確かめたかったので、姿勢が前のめりになってしまいましたが本来、人形遣いの方は人形の後ろか脇に立っていて動きを確かめながら遣うことはありません。
「うまくできるようになるまでに何十年もかかる」ということがよくわかりました。

5月の文楽講演で女忠臣蔵といわれる「加賀見山旧錦絵」を観劇した際は勘十郎さんが遣う娘、吉田玉男さんのお局などに、改めて魅了されるとともに義太夫はもちろん、美しい舞台のつくり、附け打ちの演出効果など、文楽の魅力をこれまで以上に堪能することができました。

IMG_3486書きたいことはまだまだたくさんありますが、百聞は一見に如かず。まだ体験したことのない方は、次の機会にぜひ遣ってみてください!

 

文責:中山薫

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