「ポン、ポ、ポン、ポポ、ポン…」と小気味良い音が魅力の和楽器、小鼓。
「“小鼓”は“こづつみ(小包)”ではなく、“こつづみ”です。間違えないでくださいね!」と切り出した大山容子先生は、大倉流小鼓方の奏者です。
小鼓に触れる機会は少ないので、今回はたくさん触れてほしいと、6挺の小鼓を持ってきてくれました。
まずは、小鼓が使われる能楽についてのお話です。
小鼓は能楽の中の楽器で、600年以上の歴史をもつお能とともに伝えられてきたとのこと。奈良時代に農村の田楽からはじまり、観阿弥が田楽の音楽的要素を取り入れて、能楽を大成。以来、お能は鎌倉、室町時代に発展しましたが、明治以降は幕府の庇護がなくなり、個々の努力によって伝えられ、残ってきたとのことです。
能楽は2008年には人形浄瑠璃文楽、歌舞伎とともに世界遺産に登録され、2020年の東京オリンピックに向けて広め知ってもらいたいと話します。
能楽の中の楽器として、笛、大鼓、太鼓とともに使われます。
桜の木をくり抜いて作った胴の両側に皮を張って、緒とよばれる紐でしめているのが小鼓。皮は馬皮が使われます。新しい小鼓は音が鳴らないそうで、「江戸だと新しいね」と言われるとのこと。たいてい100〜200年前の楽器を使っているそうです。胴に美しい蒔絵を施された小鼓はまさに美術品で、楽器とはよばずにお道具として扱っているというのも納得。
打ち方は左手で持って右肩にのせ、右手で打ちます。
「小鼓の持ち方もそうですが、雛人形の五人囃子の並び順もよく間違っているんですよ。」
五人囃子は文字通りお囃子をする男の子のお人形。向かって右から扇を持った謡、笛、小鼓、大鼓、太鼓が正しい並び順だそうです。
「結構いいかげんに並んでいることが多く、間違っているとついつい直しちゃいます。口そのものを使う謡から笛、小鼓と、楽器が口から離れていく順に並んでいるんです。これだけは覚えて帰ってくださいね」と大山先生。
小鼓のイロハを知ったところで、通常は笛と大鼓とともに演奏するお能の出の曲、「橋がかり」を大山先生が演奏。
「ヨー、ホー、イヨー」とかけ声をかけながら「ポン、ポーン、ポポーン」と小鼓の音が響きます。
左手を右肩にあてて、右手で左手を打つエアー小鼓で練習後、実際に小鼓を手にとっての音だしです。
曲は「たかさごや〜」で知られる「高砂」。くすり指で打つ「チ」と全部で打つ「ホ」。それに「コミ」という間の組み合わせで決まったリズムを打ちます。
実際に体験してみると、小鼓を持つ左手にも力がいり、いい音をだすのは難しいと実感。それでも「ポーン」と音がでると気持ちよく、貴重な体験となりました。
近年はお稽古で小鼓を習う人も増えているそうです。小鼓のもつ響きと間の魅力を感じた講座でした。
文責:皆方久美子